ある夜のことです。
夕ご飯の途中で、息子が急に言いました。「ちょっと休憩する」。そう言って、テーブルにそっと頭を乗せた。
最初は、ふざけているのかと思いました。よくあるんです、ご飯中に急に変なことを言い出すやつ。だから「はいはい、休憩ね」くらいの気持ちで見ていました。でも声をかけても反応がない。
もう一度呼んでみると、すでに寝息が聞こえてくる。食事の途中で、そのまま眠ってしまっていたんです。
ミッキーのお皿には、食べかけのご飯がそのまま残っていました。恐竜のパジャマのまま、テーブルの上で夢の中。お気に入りのカップも、飲みかけのまま、そっと置かれていました。

笑ってしまいながら、でも、なんだかじんとしました。
この子は毎日、本当に全力で生きているんだな、と思いました。
朝起きたら走り出して、一日中遊んで、笑って、泣いて、怒って、また笑って。
3歳の世界は、毎日が新しいことだらけで、毎日がいっぱいいっぱいなんです。
大人みたいに、上手に力を抜くことができない。
疲れたなと思っても、面白いことが目の前にあったら、また全速力で向かっていく。
「楽しい」の全部を使い切って、そのまま力尽きる。
それって、すごいことだと思うんです。
野球をやっていた時、監督によく言われていました。
「全力でやった日の疲れは気持ちいいだろう」と。
あの頃は毎日、練習で泥だらけになって、くたくたになって帰ってきた。
キャンプでもそうです。朝から夜まで動き続けて、焚き火の前でそのまま寝てしまうことがある。
あの感覚と、息子の今がどこか重なりました。
全力で動いた後の、あの心地よい疲労感。
息子はきっと、毎日それをやっているんです。
大人になると、どこかで手を抜くことを覚えてしまう。
疲れたふりをしたり、適当に流したり、
「まあいいか」で片付けたり。
でもこの子はまだ、そういうことを知らない。
持っているエネルギーを、全部、その日に使い切って眠る。
毎日、本気で生きている。そのまっすぐさに、大人の自分が気づかされることがあります。
起こすのがかわいそうで、しばらくそのままにしていました。
ミッキーのお皿を片付けながら、「今日も一日、よく頑張ったね」と心の中でつぶやきました。
残ったご飯を見ながら、明日の朝はちゃんと食べてくれるかな、なんてことも考えながら。
一生懸命に生きるって、こういうことなんだと思います。
難しいことじゃなくて、今日という一日を、持っている全部で過ごすこと。
テーブルの上で眠る3歳の息子が、またひとつ、大事なことを教えてくれました。
塾では毎日、勉強を頑張る子どもたちと向き合っています。
「もっと頑張れ」と言うこともあります。
でも本当の頑張りって、テスト結果や成績だけじゃないんだよなと、息子を見ていると思います。
今日という一日に、全部ぶつけること。
それだけで十分なんだと、この小さな背中が教えてくれています。
