【みずほ台】ミヤのひとりごと ~シェフ誕生~

息子が、キッチンに立ちたがるようになりました。

きっかけは、よく覚えていません。いつの間にか「ぼくもやる!」と言いながら、台所に顔を出すようになっていた。最初は邪魔だなと思ってしまっていた自分がいたのも、正直なところです。でも最近は、一緒にキッチンに立つことが、なんだか楽しみになってきました。

この日は、バナナパウンドケーキを作りました。

赤いエプロンをつけて、ボウルの前に立つ息子。熟したバナナをつぶして、卵と混ぜて、ホイッパーでぐるぐるかき混ぜる。その作業が、よほど楽しかったのか、ずっと無言で混ぜ続けていました。声をかけても返事が来ないくらい、真剣な顔をしていました。そして混ぜながら、「おいしくな~れ!おいしくな~れ!」と何度も繰り返していました。魔法のことばを唱えながら、一生懸命ホイッパーを動かすその姿が、なんともかわいくて、思わず笑ってしまいました。

3歳の子どもが、あんなに集中する顔をするんだな、と思いました。

塾で毎日、子どもたちと向き合っています。勉強に集中できない、すぐに気が散る、やる気が続かない。そういう話をよく聞きます。でも子どもって、本当は集中できる生き物なんですよね。ただ、その対象が「勉強」じゃないだけで。バナナをつぶす息子の横顔を見ながら、そんなことを考えていました。好きなこと、やりたいことに向かう時の集中力は、大人だって敵わない。

焼き上がりを待つ時間も、なんだか特別でした。オーブンの前でじっと待って、「まだ?」「まだ?」と何度も聞いてくる。何かができあがるのを、ただ待つ時間。その時間が、実はすごく豊かなんです。

できあがったパウンドケーキを、家族みんなで食べました。

「おいしい!」と言いながら、息子が笑いました。「ぼくが作ったんだよ」と、何度も言っていました。

自分で作ったものがおいしい、という感覚。それはスーパーで買ってきたものでは絶対に味わえない感覚です。材料を混ぜて、焼き上がるのを待って、できたものを誰かと食べる。そのプロセス全部が、おいしさの中に入っているんだと思います。「おいしくな~れ」という魔法のことばも、きっとちゃんと効いていたんだと思います。

塾の授業で伝えたいことも、実はそれと同じです。答えを教えることより、考えるプロセスを一緒に経験すること。そっちの方が、ずっとおいしい。

息子がまた、「次はなに作ろうか」と言っています。

このシェフ、当分やる気が続きそうです。

この記事を書いた人

宮永 裕介