去年の10月のこと
幼稚園の運動会で、息子が金メダルをもらいました。
首から下げて、家までずっと自慢げな顔をしていたのを覚えています。
その金メダルを下げたまま帰る途中、
駐車場でしゃがみ込んでいました。
何をしているんだろうと覗いてみると、
目の前にカマキリが一匹。

ああ、また報告してるな、と思いました。
うちの息子は、いつもカマキリくんに話しかけているんです。
今日あった出来事、ちょっと嬉しかったこと、
ちょっと悔しかったこと。
家族にはなんとなく恥ずかしくて言わないようなことも、
カマキリくんにはなぜか素直に話せるみたいで。
この日も、金メダルをぐっと差し出しながら、こう話しかけていました。
「僕、金メダル取ったよ!頑張ったよ!」
その横顔を見ていて、胸がいっぱいになりました。
ヘルメットをかぶったまま、しゃがみ込んで、真剣な顔で。
誰よりも先に、カマキリくんに伝えたかったんだと思います。
頑張ったね、と声をかけてあげたい気持ちもありました。
でも、その瞬間はそっと見守ることにしました。
あの報告は、あの子とカマキリくんだけの、大事な時間だから。
3歳の世界には、人間も虫も、あまり区別がないんだなと思います。
カマキリくんは、たぶん息子にとって一番安心して話せる相手なんでしょう。
評価もしない、急かさない、ただじっと聞いてくれる。
そういう存在が、子どもには必要なのかもしれません。
大人になると、いつの間にか「話す相手」を選ぶようになります。
この人になら言える、この人には言わない。
そうやって、素直な気持ちにどんどん蓋をしていく。
でも息子を見ていると、嬉しかったことをまっすぐ誰かに伝えるって、
本当はもっとシンプルなことなんじゃないかと思わされます。
結局、カマキリは茂みの中に逃げていきました。
それでも息子は、しばらく満足そうな顔をしていました。
きっと、ちゃんと伝えられたと思っているんでしょう。
頑張ったことを、誰かに聞いてもらいたい。認めてもらいたい。
それを、こんなに小さい体で、
こんなにまっすぐ表現できる息子を見ていると、
親としても、たくさん励まされます。
